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房総の偉人

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大多喜水道物語

大多喜町の昔ばなし

1
♪大多喜城下にゃお嫁にゆくな
朝の暗いうちから水くみ仕事
水くみ水くみで日がくれる♪

歌にも歌われたように、一四〇年ほど昔、大多喜城下の人達はたいへん水に困っていました。
そこで大多喜藩知事大河内正質(はんちじおおこうちまさただ)は、城山から水を引くことを決意しました。 城下の豪商小高半左衛門(ごうしょうおだかはんざえもん)(柳原(やなばら))が世話役となり、三上七五郎(みかみしちごろう)(上原(うえはら))高橋四郎左衛門(たかはししろうざえもん)(小苗(こみょう))等が中心になり計画を立てました。

2
明治二年十一月、静かな城山にカマ、ナタ、クワやスキ、モッコを持った大勢の人夫たちが集まりました。
「みなさんご苦労さまです。工事完成のあかつきには、私たちの生活がきっと豊かになります。・・・川までくみに行っていた水くみもなくなります。万が一火事がおこっても、水の心配はなく・・・」
半左衛門は工事によってもたらされる豊かな生活を説明しました。そうして最期に
「・・みんなで力を合わせて働けば短期間で完成します。みなさんよろしくお願いします」
と、話をしめくくりました。
人々は半左衛門のことば一つ一つにうなずきました。
「きれいな水が飲める」
「さあ、協力して働こう」
人夫たちは朝早くから夜遅くまで、一生懸命働きました。この工事で延べ人数にして五千六百六人が働きました。

3
明治三年五月。工事開始からわずか七ヶ月という短い日数で完成しました。この短期間の完成に、半左衛門、七五郎・四郎左衛門、そして大河内正質もおどろきました。
「やったー、水がきた。ばんざい、ばんざい」
手を合わせ、水に深々と頭を下げ祈る人たちさえいました。
この水道は昭和二十九年、町営水道ができるまで約八十年もの間、大多喜町民に恵みを与えてきました。

おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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