1
御宿の夜空(よぞら)は美しい。
御宿海岸(かいがん)で見る夜空も、
浅間山(せんげんやま)で見る夜空も美しい。
このお話は、
夜空にかがやく、星の話です。
2
むかしむかし、御宿に八五郎(はちごろう)という男が住んでいました。
晴(は)れた日のことでした。
八五郎は、村の人達(ひとたち)に言いました。
「今夜、空の星を落とすから、見に来ないか」
「星を落とすって、そんなバカな・・・、うそつくな」
「知っているか。星は金(きん)でできているから、キラキラ光るんだ」
「ええ、金」
「そうだ、金だ。金をひろいにこいや」
村の人たちは(そんなバカな。空の星なんか落とせるもんか)と、半信半疑(はんしんはんぎ)でした。
八五郎は
「うそというなら、来なくてもいいさ。・・・でも、後で後悔したって、知らねえぞ」
と言いました。
3
夜になりました。
御宿の夜空には、たくさんの星が、キラキラ輝いています。
昼間、うそだ、バカだと言った村人が、八五郎の家に、やってきました。
すると八五郎は、長い竹ぼうきを持って、屋根(やね)の上にのぼりました。
♪
そーら、落(お)ちろ、金(きん)の星(ほし)
キラキラ光(ひか)る 金の星
夜空の金を 手(て)に入(い)れりゃ
きょうから みんな長者様
4
八五郎は竹ぼうきをふりまわしました。
でも、星は落ちてきません。
八五郎は、疲(つか)れてきました。
「八五郎、早く落としてみろ」
「ま、待ってろ」
竹ぼうきをふりながら、また歌いだしました。
♪
そーら、落ちろ、金(きん)の星
キラキラ光る 金の星
夜空の金を 手に入(い)れりゃ
きょうから みんな長者様
見ている村人も、いっしょにに歌い出しました。
♪
そーら、落ちろ、金の星
キラキラ光る 金の星
夜空の金を 手に入れりゃ
きょうから みんな長者様
5
やがて村人達は
「星なんか落ちるはずがねえ、帰ろうぜ」
と、帰(かえ)ろうとした、その時です。
流(なが)れ星がスーッと、落ちました。
八五郎は言いました。
「星を落としたぞ。さあ、ひろってこい。金持ちになれるぞーっ」
大声でさけびましたとさ。
おしまい
(斉藤 弥四郎 著)