一月一日は宮廷においては、天皇陛下が午前五時半、束帯を着し、神嘉殿の南庭に出御し宝祚(ほうそ)の無窮、天下泰平、五穀豊穣、万民の安寧を祈願せられる行事が執り行われることになっており、小学校においても新年の祝賀式が行われた。子供達は衣服を整えて登校した。当時、独立した講堂がなかったので、三教室の間仕切りの板戸を取り払って仮の講堂として祝賀式を挙行した。
当日は式壇の最上段に今上陛下の御真影が、恭しく安置され、礼服に威儀を正した校長先生、次席訓導や男性教員、えんじ色や紺の袴をはいた女教員が居並び来賓の村長はじめ、村の名士と言われる方々が左右に分かれて列席し、国歌並びに新年祝賀の唱歌を斉唱し極めて厳粛に式は進められ、校長訓話、村長、来賓の祝辞が続いた。この名士の中に必ずサーベルを着けた制服姿の駐在巡査が村の安全を一手に引き受けるという自信に満ちた顔を並べていた。
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