大多喜町 西畑歳時記3月

弥生

牛つくれ

当時の農家には農耕用の牛か馬が必ず飼われていた。農耕用と言ってもこの家畜が働くのはだいたい四月、五月の田の鋤起こしや代掻き等に使うのが主なるもので、その他の月は畜舎に入れられたまま、餌を与えられていた。その為、足の爪が伸び過ぎて農耕作業に差し支えるので、「牛つくれ」といって伸びた爪を切り詰めることが必要であった。この作業も当番制で家順に廻っていった。その方法は予め用意してある太い網を牛の背と足にかけ、六、七人の男達がかけ声と共に反対側に強く引く。牛はたまらず、ドタリと地に倒れる。

この際、下手をすると牛の頭が地に叩きつけられて、角を損傷することもあり、飼い主は手綱を握って牛の頭を抱くようにして注意する。そして、「馬医」と称する職人が鋭利な小鎌で爪を切り詰めて仕上げるのである。後にこの方法は改良され、木枠を作っておいて、牛を倒さずに爪切りをするようになった。この場所を「牛つくり場」と言った。これも機械化と共に自然に消滅した。

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つか坊と姉ちゃん